錯覚卿 第1話
── 今日の揺れ ──
最初の確信
寄りのあと、ローソク足は高値圏に残っていた。
一度押しても安値は切り上がり、下ヒゲをつけて戻る。
崩れる形には見えなかった。
横ばいの時間まで、むしろ強さに見えていた。
上にいる。
それだけで、もう弱い側ではない気がした。
崩れていない。
それだけで、続く側に入った気がした。
次の足も大きくは崩れない。
高値は抜けていないのに、抜ける前の形に見える。
少し売られても、押し目に見えた。
このまま上に行く。
そういう流れの中に、もう乗っている気がしていた。
入ったあと、一度は含みが乗る。
減っても、崩れた感じはない。
だから切る理由は見当たらない。
むしろ、ここで降りる方がズレているように見えた。
まだ持つべき位置にいる。
そのまま、勝てる側に残っているつもりでいた。
見えている形は変わっていない。
高値は越えていない。
伸びも止まりかけている。
それでも、崩れていないことだけが前に残る。
下げは弱く、戻りは早い。
そう見える部分だけで、全体が整っていく。
「一体いつから、勝てると錯覚していた?」
強いから持っているのか。
持っているまま、強さを拾い直しているのか。
小さな陰線も、崩れたとは呼ばなくなる。
止まっている時間まで、ためているように見える。
残っているのは、上にいた場面ばかりだった。
戻したところ。
下ヒゲをつけたところ。
崩れなかったように見えたところ。
押し返された場面は、少し曖昧になる。
均等に見ていたつもりだった。
高値も、押しも、止まり方も、並べていたはずだった。
だが、上にいる時間だけが少しずつ強く残る。
まだ上にいる。
まだ崩れていない。
そのまま、勝てる側にいる気がしていた。
本当に見ていたのは、形だったのか。
それとも、上にいるという位置だけだったのか。
次の一本を待つあいだ、
その確信だけが、少しだけ揺れずに残る。
不安も欲もある。
何も足さない。何も引かない。
→相場で勝つために、絶対に必要なこと


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