崩れていないだけだった|錯覚卿

錯覚卿

錯覚卿 第5話

── 今日の揺れ ──

安心


そのまま持っていた。

売る気にはならなかった。
崩れた形には見えなかったからだ。

まだ上にいる。
だから、問題はないと思った。

少し下げても、すぐに戻す。
動きは重くない。

崩れたというより、揺れているだけに見える。
そのたびに、まだ大丈夫だと感じていた。

どこかで、基準が変わっていた。

伸びるかどうかではなく、
崩れていないかどうかだけを見ている。

それだけで、持ち続ける理由になっていた。

小さく削れても、気にならない。
大きく崩れていないからだ。

戻る場面があれば、それで十分に見える。

同じ動きでも、意味が軽くなる。
下げは途中に見える。

まだ終わっていない側に、自然と寄っていく。

気づけば、「安心」という言葉が残る。

何が良いのかは、はっきりしない。
ただ、悪くないという感触だけが続いている。

その感触が、そのまま判断になる。

持っていることが、
そのまま正しいように見えていた。

静かに割り込む。

「崩れていないことが、なぜ続く理由になる」

形は、まだ崩れていない。
位置も、大きくは変わっていない。

それでも、少しずつ削れている。

上にいた時間よりも、
削れている時間の方が長くなっている。

それでも、印象は変わらない。

崩れていない。
だから、大丈夫。

その並びが、そのまま残る。

強さではなく、
崩れていないというだけの状態。

それでも、同じ場所に置かれている。

どこからが安心で、
どこまでがただの未崩れなのか。

少しだけ、曖昧になる。


→次話:その形は、整って見えた
→入口


怖さも欲もある。
  何も足さない。何も引かない。
→相場で勝つために、絶対に必要なこと


 

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