第4話
電車の中で、スマホの画面だけが近かった。
窓の外は流れていたけれど、目はほとんど動いていなかった。
さっきの場面が、まだ残っている。
入ったあと、すぐに利確した。
伸びる前に手を離した気もする。
でも、あのときはあれでよかったようにも思えた。
崩れる前に終えた。
そう考えると、少しだけ安心できた。
そのまま、チャートを見返す。
もう少し持てた形にも見える。
けれど、早く切った理由も、どこかに残っている。
開いたままのタブを指でずらす。
保存していた手法まとめ記事が出てきた。
前にも見たことがある。
でも、今なら少し違って見える気がした。
上から順に眺めていく。
形ごとに分かれていて、見やすい。
さっきのトレードも思い出す。
あの場面は、こっちの見方の方が合っていたのかもしれない。
少しだけ、前より見やすくなった気がした。
そのまま、別の項目も開く。
似たような形なのに、少しずつ言い方が違う。
けれど、どれもそれらしく見える。
前より合うものがある気がした。
今まで使っていた見方より、こっちの方が落ち着く気もする。
画面の中に、気になるものが増えていく。
一つ読むたびに、判断の前に置くものが増える。
次はこれも見た方がいいかもしれない。
これも残しておけば、迷わずに済むかもしれない。
そう思って、また一つ保存した。
少し使えた感じがあると、消す理由がなくなる。
まだ決まっていないのに、置いておく理由だけが残っていく。
もう一度、さっきのチャートを開く。
前より整って見える。
ただ、どれを当てはめるのかは、まだ決まっていなかった。
選べるものが増えたのに、手は止まったままだった。
スマホを閉じる。
降りる駅までは、まだ少しある。
安心したかっただけなのかもしれない。
それでも、増えたものはどこかで使えそうに見えた。
何かを減らしたつもりはないのに、判断だけが一つ減った気がした。
「それ、次に開くのはいつになりそう?
気になるものは増えるのにね」
→次話:考えなくていい、という安心
→入口
不安も欲もある。
何も足さない。何も引かない。
→相場で勝つために、絶対に必要なこと



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