第1話
最初に見たとき、形はきれいだった。
高値を揃えて、押しも浅い。
崩れた並びには見えない。
少し前にも、似た形を見ていた。
そのときは、素直に上へ抜けた。
だから今回も、同じように見えた。
どこで入るかは、なんとなく分かる。
どこで切るかも、頭の中では置けている。
次の足が出れば入れる。
そんな位置だった。
画面を見ながら、少しだけ安心していた。
これは分かる。
見れば分かる。
そう思ったところで、手が止まる。
一応、もう一回だけ見る。
押しの深さ。
出来高。
直前の上げ方。
どこにも引っかかりはない。
むしろ、整っていた。
だからこそ、急がなくてもいい気がした。
まだ崩れていない。
今すぐじゃなくてもいい気がした。
そう思って、次の足を待った。
その間も、並びは崩れない。
横に滑るだけで、弱さは前に出てこない。
いい位置にいる。
いつでも入れる。
分かっているから、焦る必要はない。
少しだけ、時間が過ぎた。
次の足で、上に抜けた。
迷いなく伸びた。
押しもなく、そのまま走った。
さっきまで見ていた形が、
そのまま続いていた。
外してはいなかった。
それでも、手は動いていない。
遅れた感覚すら薄かった。
ただ、見ていた。
「理解はしていますね。
では言います。あなたの行動力は…0に近いようですね。」
もう一度、チャートを見る。
形は崩れていない。
むしろ、さっきより強く見える。
今からでも入れそうだった。
でも、さっきの位置ではない。
その差は小さい。
けれど、さっきは軽かった。
どこで止まったのかは、うまく言えない。
分かったところまでは覚えている。
止まった理由だけが、残っていない。
画面の中では、まだ形が続いている。
入れる場面は、まだ残っているように見える。
だから、もう一度だけ見る。
次の足を待つ。
少しだけ整えば、今度こそ入れる。
そんな気が、まだ残っている。
その感覚のまま、もう一つだけ見てください。
→四次元ポケット 第1話
→次話|それ、前にも見ている
→入口
不安も欲もある。
何も足さない。何も引かない。
→相場で勝つために、絶対に必要なこと



コメント